かつて「節税保険」と呼ばれ、保険料の全額や大部分を損金にできる法人保険が広く販売されていました。しかし、2019年に国税庁が取扱いを改正し、その後は金融庁も販売の仕方を厳しく見るようになりました。いまは「保険で大きく節税する」ことは難しくなっています。
この記事では、2019年に何が変わったのか、いまのルールでどう処理するのか、法人保険をどういう視点で考えればよいかを解説します。
「節税保険」と呼ばれていたもの
2019年より前は、定期保険や第三分野保険(医療保険・がん保険など)の保険料の扱いが保険の種類ごとに決められていて、解約返戻金が多いのに保険料の全額や大部分を損金にできる保険がありました。利益が出た年に保険料を払って損金を増やし、数年後に解約して返戻金を受け取る、という使われ方をしていたため、「節税保険」と呼ばれていました。
2019年に何が変わったか
2019年2月、国税庁が取扱いを見直す方針を示し、多くの保険会社がこうした保険の販売を止めました。その後、同年6月に法人税基本通達が改正され、2019年7月8日以後に契約した定期保険と第三分野保険は、「最高解約返戻率」によって保険料の一部を資産に計上するルールに変わりました(国税庁 No.5364-2)。
| 最高解約返戻率 | 資産に計上する割合 | 資産に計上する期間 |
|---|---|---|
| 50%以下 | なし(期間の経過に応じて損金) | - |
| 50%超70%以下 | 保険料の40% | 保険期間の前半40%の期間 |
| 70%超85%以下 | 保険料の60% | 保険期間の前半40%の期間 |
| 85%超 | 最高解約返戻率の70%(最初の10年間は90%) | 原則として最高解約返戻率となる期間まで |
※最高解約返戻率が70%以下で、年換算保険料相当額が被保険者1人あたり30万円以下の場合などは、全額を損金にできます。資産に計上した分は、保険期間の後半などに決まった期間で取り崩して損金にします。
このルールでは、解約返戻金が多い保険ほど、資産に計上する割合が大きくなります。つまり、「たくさん戻ってくるのに、払ったときに全額損金になる」という仕組みは使えなくなりました。
金融庁も販売の仕方を規制
通達の改正後も、節税を主な目的とした商品の開発や販売が続いたため、金融庁は保険会社向けの監督指針で対応を強めています。法人の財テクを主な目的とした契約や、はじめから短い期間での解約を前提とした契約など、保険本来の趣旨から外れた募集をさせないよう求めています。また、商品の審査では国税庁と情報を共有する仕組みも設けられました(金融庁)。
そもそも保険の「節税」は税金の先送り
2019年より前の保険でも、損金にした保険料は、解約返戻金を受け取ったときに益金として戻ってきます。保険料を損金にする効果の多くは、税金をなくすものではなく、税金を払う時期を先に送るもの(課税の繰延べ)でした。
先送りに意味があるのは、解約返戻金を受け取る年に、役員退職金の支払いなど大きな損金を合わせられる場合です。この考え方は法人保険の出口戦略で解説しています。
いま法人保険を考えるときの視点
- 目的を先に決める:社長に万一のことがあったときの借入金の返済や運転資金、役員退職金の財源など、何のための保険かを先に決める
- 経理処理を確認する:保険料のうち、いくらが損金で、いくらが資産になるかを確認する
- 出口を決めておく:解約返戻金をいつ受け取り、その年にどんな損金を合わせるかを考えておく
- 資金が固定されることを理解する:解約返戻率は加入からの年数で変わり、早く解約すると払った保険料より少なくなることが多い
- 説明が節税だけに偏っていないか:保障の内容や解約したときの税金より、節税効果ばかりが強調される説明には注意する
2019年7月7日以前に契約した保険がある場合
2019年7月7日以前に契約した保険は、契約したときのルールで処理を続けます。今回の改正で、過去の処理をやり直す必要はありません。ただし、こうした保険の多くは、解約返戻率が高い時期が決まっています。返戻率が下がり始める前に、解約や払済保険への変更などの出口を検討しておくことが大切です。解約したときの仕訳は法人保険の解約の仕訳と注意点をご覧ください。
まとめ
- 2019年7月8日以後の契約は、最高解約返戻率によって保険料の一部を資産に計上する
- 金融庁も、節税を主な目的とした保険の販売を監督指針で規制している
- 保険料を損金にする効果の多くは、税金の先送り
- いまは「何のための保険か」を先に決め、経理処理と出口を確認したうえで検討する
よくある質問
- いまでも保険料を全額損金にできる法人保険はありますか?
-
最高解約返戻率が50%以下の保険などは、保険料を期間の経過に応じて損金にできます。ただし、解約返戻金がほとんどない保険が中心で、解約返戻金を受け取りながら全額を損金にする使い方はできなくなっています。
- 2019年以前に入った保険の処理は変わりますか?
-
変わりません。2019年7月7日以前に契約した保険は、契約したときのルールで処理を続けます。解約返戻率が下がる前に、出口を検討しておくことをおすすめします。
- 法人保険は節税になりますか?
-
保険料を損金にできても、解約返戻金を受け取ると益金になるため、多くは税金を払う時期を先に送る効果です。退職金の支払いなど大きな損金が出る年に解約を合わせられれば、税負担をならしやすくなります。
- 最高解約返戻率とは何ですか?
-
保険期間中で解約返戻率(払った保険料に対して戻る割合)が最も高くなる時期の率です。2019年7月8日以後の契約は、この率によって保険料のうち資産に計上する割合が決まります。
無料相談のご案内
「以前に入った保険をどうすればよいか」「いまの会社に保険が必要か」を整理したい方は、お気軽にご相談ください。オンラインで全国から相談できます。