法人保険の解約の仕訳と注意点|解約返戻金の勘定科目と資産計上額の取崩し

法人保険を解約したときの仕訳は、「解約返戻金を受け取る」「資産に計上していた保険料を取り崩す」「差額を雑収入(または雑損失)にする」の3つが基本です。どの科目をいくら取り崩すかは、保険の種類と契約時期によって変わります。

この記事では、よくある3つのパターンの仕訳例と、解約する前に確認したい注意点を解説します。

目次

解約の仕訳の基本

解約したときは、受け取った解約返戻金と、その契約で資産に計上している額(保険料積立金・前払保険料など)を比べます。

  • 解約返戻金のほうが多い:差額を雑収入(益金)にする
  • 解約返戻金のほうが少ない:差額を雑損失(損金)にする

資産に計上している額は、契約時期と保険の種類で決まります。2019年7月8日以後に契約した定期保険と第三分野保険は、最高解約返戻率が50%を超える場合に、その率に応じて保険料の一部を資産に計上しています(国税庁 No.5364-2)。養老保険は、受取人によって全額または2分の1を資産に計上します(国税庁 No.5360)。

パターン別の仕訳例

1. 資産計上のない保険を解約した場合

保険料の全額を損金にしていた保険を解約し、解約返戻金300万円を受け取った場合です。資産に計上している額がないため、受け取った全額が雑収入になります。

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借方金額貸方金額
普通預金300万円雑収入300万円

2. 一部を資産に計上していた定期保険を解約した場合

2019年7月8日以後に契約した定期保険で、前払保険料として1,200万円を資産に計上しており、解約返戻金4,000万円を受け取った場合です。前払保険料を全額取り崩し、差額の2,800万円を雑収入にします。

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借方金額貸方金額
普通預金4,000万円前払保険料1,200万円
雑収入2,800万円

資産計上額を取り崩している途中(取崩期間)に解約した場合は、その時点で残っている資産計上額を取り崩します。

3. 解約返戻金が資産計上額より少ない場合

保険料積立金として800万円を資産に計上していた保険を解約し、解約返戻金が700万円だった場合です。差額の100万円は雑損失になります。

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借方金額貸方金額
普通預金700万円保険料積立金800万円
雑損失100万円

※金額はわかりやすくするための例です。科目名(前払保険料・保険料積立金など)は会社の経理方法によって異なります。

一緒に処理するもの

契約者貸付の残高がある場合

契約者貸付を受けている場合は、解約返戻金から貸付金と利息が差し引かれて振り込まれます。仕訳では、振り込まれた額のほかに、借入金を消し、未払いの利息を支払利息として処理します。

積み立てた配当金がある場合

契約者配当金を保険会社に積み立てている場合は、解約時に配当金も一緒に支払われます。配当金は、通知を受けた事業年度に益金として処理しているのが原則です。すでに資産(配当金積立金など)に計上している分は取り崩し、利息などの差額を雑収入にします。

消費税

保険料は消費税が非課税、解約返戻金は対価性がないため不課税です。どちらも消費税の計算には影響しません。

解約する前に確認したい5つのこと

1. 益金が出る年に損金を合わせられるか

解約返戻金が資産計上額より多いと、その年の利益が増えます。役員退職金の支払いや設備の入れ替えなど、大きな損金が出る年に合わせると税負担をならしやすくなります。役員退職金と合わせる考え方は法人保険の出口戦略で解説しています。

2. 決算日をまたがないか

解約の手続きをしてから入金されるまでには日数がかかります。決算日の直前に手続きをすると、どちらの事業年度の益金にするかが問題になることがあります。決算日が近いときは、計上する年度を顧問税理士と確認してから手続きしましょう。

3. 解約返戻率が下がる時期ではないか

解約返戻率は加入からの年数で変わります。数か月待つと返戻率が上がる場合や、反対に下がり始める場合もあるため、保険会社の資料で今後の推移を確認します。

4. 解約したあとの保障は足りるか

解約すると保障はなくなります。借入金の返済や事業承継の資金など、社長に万一のことがあったときに必要なお金を、ほかの方法で用意できているかを確認します。年齢や健康状態によっては、あとで同じ条件の保障に入り直せないこともあります。

5. 解約以外の方法はないか

一時的な資金不足であれば契約者貸付、保険料の負担を止めたいだけなら払済保険への変更、少しずつ受け取りたいなら減額といった方法もあります。それぞれの経理処理は法人保険の出口戦略にまとめています。

まとめ

  • 解約の仕訳は、解約返戻金と資産計上額の差額を雑収入(または雑損失)にするのが基本
  • 資産計上額は、保険の種類と契約時期(2019年7月8日の前か後か)で決まる
  • 契約者貸付や積立配当金がある場合は、一緒に処理する
  • 解約の前に、益金が出る年度・返戻率の推移・解約後の保障を確認する

保険積立金という科目の意味は保険積立金とは、養老保険の処理は養老保険の経理処理で解説しています。

よくある質問

法人保険の解約返戻金はどの勘定科目で処理しますか?

受け取った解約返戻金から、その契約で資産に計上している額(保険料積立金・前払保険料など)を取り崩し、差額を雑収入として処理するのが一般的です。解約返戻金のほうが少ない場合は、差額を雑損失にします。

解約返戻金に消費税はかかりますか?

かかりません。解約返戻金は対価性がないため不課税です。保険料も消費税は非課税です。

全額損金にしていた保険を解約するとどうなりますか?

資産に計上している額がないため、受け取った解約返戻金の全額が雑収入(益金)になります。その年の利益が増えるため、解約する年度に注意が必要です。

解約返戻金が資産計上額より少ないときはどうしますか?

資産計上額を全額取り崩し、解約返戻金との差額を雑損失として損金にします。

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解約・払済・減額などの選択肢と、保障の見直しの考え方を整理したい方は、お気軽にご相談ください。具体的な益金の額や税額の計算は、顧問税理士にご確認ください。オンラインで全国から相談できます。

参考資料

この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、宅地建物取引士、保険募集人。銀行勤務を経て、FPとして経営者の相続・資産・保険の相談に従事。2025年に相続専門の行政書士事務所を開業し、相続専門サイト「横浜青葉相続遺言相談センター」も運営。役員退職金・事業承継・法人保険の税務を、国税庁などの一次情報にもとづいて解説しています。

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