保険差益とは、会社が受け取った保険金が、その保険や保険の対象になった資産の帳簿上の金額を上回ったときの差額です。保険差益は会社の益金になるため、受け取った年の法人税が増えることがあります。
この記事では、生命保険と損害保険それぞれの保険差益の処理と、火災などで建物が被害を受けたときに使える「圧縮記帳」の仕組みを解説します。
保険差益が出る2つの場面
| 場面 | 保険差益の計算 | 課税を先に送る方法 |
|---|---|---|
| 生命保険の保険金を会社が受け取った | 保険金 − 資産に計上している保険料 | 退職金などの損金と同じ年度に合わせる |
| 火災などで固定資産が被害を受け、損害保険金を受け取った | 保険金 − 経費 − 被害資産の帳簿価額 | 代替資産を取得すれば圧縮記帳ができる |
生命保険の保険差益
役員が亡くなり、会社が受取人の生命保険から死亡保険金を受け取った場合、その契約で資産に計上している保険料(保険料積立金・前払保険料など)を取り崩し、保険金との差額を雑収入にします。
たとえば、死亡保険金が5,000万円、資産に計上している額が1,000万円なら、差額の4,000万円が雑収入(益金)です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 5,000万円 | 保険料積立金 | 1,000万円 |
| 雑収入 | 4,000万円 |
生命保険の保険差益には、次の圧縮記帳のような特例はありません。同じ年度に死亡退職金や弔慰金を遺族に払う場合は、その損金と保険差益が重なり、税負担をならせることがあります。死亡退職金の額も、「高すぎる部分は損金にならない」というルールは同じです。役員退職金の考え方は役員退職金の計算方法と相場で解説しています。
損害保険の保険差益と圧縮記帳
火災などで建物や機械が壊れ、損害保険金を受け取ると、保険金が被害資産の帳簿価額を上回る分が保険差益になります。古い建物ほど帳簿価額が小さいため、保険差益は大きくなりがちです。
この保険差益に法人税がかかると、建て直す資金が足りなくなってしまいます。そこで、保険金で同じ種類の資産(代替資産)を取得した場合は、保険差益の分だけ代替資産の帳簿価額を減らし、その額を損金にできます。これが「保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳」です(法人税法第47条)。
対象になる保険金
対象は、会社が持っている固定資産が滅失・損壊したことで受け取る保険金・共済金・損害賠償金です。商品などの棚卸資産の損害に対する保険金や、休業による収益の減少を補う保険金は対象になりません(国税庁 法人税基本通達10-5-1)。
圧縮できる額の計算
- 保険差益 = 保険金 − 滅失のための経費(取壊費・焼跡の整理費など) − 被害資産の帳簿価額(被害を受けた部分)
- 圧縮できる額 = 保険差益 × 代替資産の取得に使った保険金の額 ÷(保険金 − 滅失のための経費)
2の「代替資産の取得に使った保険金の額」は、「保険金 − 滅失のための経費」が上限です。受け取った保険金をすべて建て直しに使えば、保険差益の全額を圧縮できます。
計算例
帳簿価額2,000万円の倉庫が全焼し、保険金5,000万円を受け取りました。焼跡の整理費が200万円かかり、6,000万円で同じ種類の倉庫を建て直した場合です。
- 保険差益:5,000万円 − 200万円 − 2,000万円 = 2,800万円
- 代替資産の取得に使った保険金:6,000万円 > 4,800万円(5,000万円 − 200万円)なので、4,800万円
- 圧縮できる額:2,800万円 × 4,800万円 ÷ 4,800万円 = 2,800万円
- 新しい倉庫の帳簿価額:6,000万円 − 2,800万円 = 3,200万円
※わかりやすくするための例です。
圧縮記帳も税金の先送り
圧縮記帳をすると、新しい資産の帳簿価額が小さくなるため、その後の減価償却費も小さくなります。保険差益に対する税金が、毎年の減価償却を通じて少しずつ戻ってくる形で、税金がなくなるわけではありません。
手続きの注意点
- 代替資産は、被害を受けた資産と同じ種類の固定資産であることが必要
- 保険金を受け取った事業年度に代替資産を取得できない場合でも、一定の期間内に取得する見込みであれば、特別勘定を使って処理を先に送れる場合がある
- 保険金の額が確定するまでは、被害による損失を損金にせず、仮勘定で処理する
- 確定申告書に、圧縮記帳の明細書(別表十三(二))を付ける
被害を受けたら、建て直しの計画と保険金の処理を、早めに顧問税理士と相談しましょう。
まとめ
- 保険差益は、受け取った保険金が帳簿上の金額を上回った差額で、会社の益金になる
- 生命保険の保険差益は、死亡退職金などの損金と同じ年度に合わせて考える
- 固定資産の被害で受け取った損害保険金は、代替資産を取得すれば圧縮記帳ができる
- 圧縮記帳は、減価償却を通じた税金の先送り
よくある質問
- 保険差益とは何ですか?
-
会社が受け取った保険金が、その保険で資産に計上している保険料や、被害を受けた資産の帳簿価額を上回ったときの差額です。会社の益金になります。
- 生命保険の死亡保険金にも圧縮記帳は使えますか?
-
使えません。圧縮記帳の対象は、固定資産の滅失・損壊で受け取る保険金などです。生命保険の保険差益は、死亡退職金などの損金と同じ年度に合わせて考えます。
- 商品が火災で焼けたときの保険金は圧縮記帳できますか?
-
できません。商品などの棚卸資産の損害に対する保険金や、休業による収益の減少を補う保険金は、圧縮記帳の対象外です。
- 圧縮記帳をすると税金はなくなりますか?
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なくなりません。新しい資産の帳簿価額が小さくなり、その後の減価償却費も小さくなるため、税金を払う時期が先に送られる仕組みです。
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