社長の退職金はいつ・いくら・どう受け取る?中小企業の社長が知っておきたい準備の全体像

中小企業の社長には、会社員のような退職金制度はありません。社長の退職金は、会社が「役員退職金」として払う形で、自分で準備しておく必要があります。うまく準備できれば、退職金は給与よりずっと軽い税金で受け取れる、引退後の大切な資金になります。

この記事では、社長の目線で「いつ・いくら・どう準備して・どう受け取るか」の全体像を整理します。

目次

社長の退職金の全体像

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決めること考え方詳しい記事
いつ受け取るか退任のとき。会長などに退くときに受け取る方法もあるこの記事
いくら受け取るか最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率が目安計算方法と相場
どう準備するか共済・保険・内部留保を組み合わせる準備方法の比較
税金はどうなるか退職所得控除と「1/2」で軽くなるかかる税金

いつ受け取るか

退任するとき

最も一般的なのは、後継者に社長を譲り、役員を退任するときです。金額は株主総会の決議などで決め、会社はその事業年度(または実際に支払った事業年度)に損金にします(国税庁 No.5208)。

会長などに退くとき(分掌変更)

社長を退いて会長や非常勤の取締役として会社に残る場合でも、仕事の内容や立場が大きく変わり、「実質的に退職したのと同じ」と言えれば、退職金を受け取れます。報酬がおおむね半分以下になることなどが目安ですが、引き続き経営の判断をしていると認められません(国税庁 No.5203)。会社に残る場合は、退職金を受け取ったあとの関わり方まで決めておくことが大切です。

事業承継の時期と合わせる

退職金を支払った事業年度は、会社の利益と純資産が減るため、自社株の評価額が下がることがあります。そのため、後継者に株式を引き継ぐ時期を、退職金を支払う時期と合わせて検討する会社もあります。株式の評価は会社ごとに大きく異なるため、顧問税理士と一緒に試算しましょう。

いくら受け取るか

中小企業では、「最終報酬月額 × 役員としての在任年数 × 功績倍率」で目安を出すのが一般的です。社長の功績倍率は3.0が目安として使われることが多く、たとえば月額80万円で25年在任した社長なら、80万円 × 25年 × 3.0 = 6,000万円です。

ただし、高すぎる部分は会社の損金になりません。退職の直前に報酬を大きく上げるのも避けたほうがよいでしょう。自分の場合の目安と手取りは、役員退職金の計算方法と相場の計算ツールで試算できます。

どう準備するか

数千万円の退職金を、退任する年の会社の資金だけで払うのは簡単ではありません。在任中から計画的に準備します。よく使われるのは次の4つで、組み合わせるのが一般的です。

  • 小規模企業共済:社長個人で積み立てる国の制度。掛金は全額が個人の所得控除
  • 経営セーフティ共済:会社で積み立て、掛金は損金。解約手当金を退職金の財源にできる
  • 法人で入る保険:在任中の万一に備えながら、解約返戻金を退職金の財源にできる
  • 内部留保:会社に利益を残す。使い道は自由だが、退職金用に取り分けにくい

それぞれの違いは役員退職金の積立・準備方法の比較、保険を退職金の財源にするときの注意点は法人保険の出口戦略で解説しています。

どう受け取るか

役員退職金は「退職所得」として、ほかの所得と分けて税金を計算します。「(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2」に税金がかかるため、同じ額を役員報酬で受け取るより、手元に残る額は大きくなります(国税庁 No.1420)。

一方で、役員の期間が5年以下だと「1/2」が使えないこと、小規模企業共済や確定拠出年金の一時金と受け取る時期が近いと控除が調整されることなど、受け取り方で税金が変わる点もあります。詳しくは役員退職金にかかる税金をご覧ください。

退任の何年前から準備するか

準備は早いほど選べる方法が増えます。目安として、次のような順番で進めるとよいでしょう。

時期やること
10年以上前退任の時期と後継者の候補を考える。役員退職金規程を作り、財源の積立てを始める
5年前退職金の目安額を試算し、財源の不足を確認する。役員報酬の水準を計画する
2〜3年前保険や共済の解約・受取りの時期を決める。自社株の引継ぎ方を顧問税理士と検討する
退任の年株主総会で退職金の額を決め、支払う。財源の受取りと損金の年度を合わせる

まとめ

  • 社長の退職金は、会社が払う「役員退職金」として自分で準備する
  • 受け取る時期は退任のときが基本。会長などに退くときも、実質的に退職と言えれば受け取れる
  • 金額の目安は「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」
  • 財源は共済・保険・内部留保を組み合わせ、退任の10年以上前から計画する

よくある質問

中小企業の社長も退職金を受け取れますか?

受け取れます。会社が「役員退職金」として支払い、株主総会の決議などで金額を決めます。社長個人が受け取るときは退職所得となり、税金が軽くなります。

社長の退職金はいくらが目安ですか?

「最終報酬月額 × 役員としての在任年数 × 功績倍率」で目安を出すのが一般的です。社長の功績倍率は3.0が目安として使われることが多く、月額80万円・在任25年なら6,000万円です。

会長として会社に残っても退職金を受け取れますか?

仕事の内容や立場が大きく変わり、実質的に退職したのと同じと言える場合は受け取れます。報酬がおおむね半分以下になることなどが目安ですが、引き続き経営の判断をしていると、退職金として認められません。

退職金の準備は何年前から始めればよいですか?

できれば退任の10年以上前から始めると、共済や保険などの方法を選びやすくなります。遅くとも5年前には目安額を試算し、財源の不足を確認しておきましょう。

無料相談のご案内

退職金の準備の進め方や、受け取り方の選択肢を整理したい方は、お気軽にご相談ください。退職金の額や税額の具体的な計算は、顧問税理士にご確認ください。オンラインで全国から相談できます。

参考資料

この記事を書いた人

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、宅地建物取引士、保険募集人。銀行勤務を経て、FPとして経営者の相続・資産・保険の相談に従事。2025年に相続専門の行政書士事務所を開業し、相続専門サイト「横浜青葉相続遺言相談センター」も運営。役員退職金・事業承継・法人保険の税務を、国税庁などの一次情報にもとづいて解説しています。

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